戦地へ17
「エレオノール隊が中央で戦った方が勝利に近付ける、ね…その根拠は?レオンハルト卿」
ウルフヘレが問いかける。カムランの実力は認めている彼だが、かといって理由もなくその意見を肯定するような事は無い。
「僕はオスカーの事を知っている。この上なく頼りになる人間だってね。もしも僕が死ぬような事があれば僕の隊は彼に引き継いで欲しいと思っているくらいには」
カムランはまずオスカーに対する全幅の信頼を口にする。その上でエレオノール隊を推す理由を述べた。
「でも、僕が信頼するオスカーと、僕が力を合わせてもなお…世界最強の男であるヴォルフラムに勝てる可能性は限りなく低い」
ヴォルフラムに勝てる可能性が低い、という総司令官の言葉に一瞬言葉が詰まるウルフヘレ。だが、何とか言葉を紡ぐ。
「…そうだとしても、それがエレオノール隊と共に戦う理由になるの?」
「ああ。エレオノール隊には、ヴォルフラム大将軍にはない未知の力がある。いや、僕にも…他の誰にもない未知の力がね」
「え?なに?それって、どういう事…?」
カムランの言葉の意味が理解できず、ウルフヘレは眉根を寄せた。
「どういう事か理解できないからこそ未知の力なんだよ、ウルフヘレ」
「いや、レオンハルト卿が何を言いたいのか自分にはよく分からないんだけど…」
「そうだろうね。僕にも分からない。だけど、エレオノール隊の今までの戦いを可能な限り調べてみた上で出したのがこの結論なんだ。エレオノール隊は…僕たちにはない未知の力で、勝利を掴んで来た」
「そんなあやふやなものに…戦いの趨勢を賭けるつもり…?」
「うん、君が訝しむのも当然だと思うよウルフヘレ。だから、皆の意見も聞かせて欲しい。僕と共に中央で戦うのは、グロスモント隊か。それともエレオノール隊か…どちらが相応しいと思うのかを」
僅かな沈黙。エレオノールが何か言葉を発するかと思い、チラリとそちらを見た椿だったが彼女は押し黙っている。まだ自分が意見を述べるべきではない――エレオノールはそう考えているようだった。




