戦地へ12
聖騎士の中でも別格とされる正義の聖騎士、カムラン・フォン・レオンハルト。その副長だけあって、ユーウェインの能力は破格だ。それこそ、自らが隊長として万単位の兵を率いていたとしてもおかしくはない。そしてその秀麗な容姿も衆目の視線を集める所だった。
男性にしては長い腰まである金色の髪、ノミで削ったように堀の深い顔立ち。隊長であるカムランと並ぶその姿は、天上を描いた名画を思わせる。
「さすがだね、ユーウェイン」
端正な顔立ち、であるがゆえに近寄りがたい雰囲気すら放つユーウェインだったが、そんな彼に対して気さくに声をかける者があった。彼は声の方へを顔を向けて答えた。
「君の戦いぶりもさすがだったよ、ガレス」
ユーウェインの視線の先にいたのは人の良さそうな茶髪の青年。グロスモント隊副長、ガレスだった。彼らは昔馴染み、なおかつ同い年という縁もあり仲が良かった。
「いや、ユーウェインには及ばないよ。ますます戦い方にキレが増してきたみたいだ。これは、噂通り次に聖騎士に任命されるのはユーウェインで決まりかな」
「いや、私など聖騎士の器ではないさ…あの方達にはまだまだ及ばない」
「相変わらず謙遜するね、ユーウェインは。でも…うん、確かに俺たちはまだまだだ。聖騎士候補って言うなら、アンスバッハ殿だっているしね」
「アンスバッハ…エレオノール・フォン・アンスバッハ殿…か」
呟くようにそう言うと共に、ユーウェインの表情が僅かに険しくなった。




