トーナメント観戦
中央広場では、騎馬に跨った帝国兵達が槍を構えその槍を、馬同士を、そして鎧に包まれた肉体同士をぶつけ合っていた。板金鎧に身を包み、勢いをつけて突進するその姿は実践さながらだ。騎馬がそれぞれ赤と青の衣装…馬着に身を包んでいるのは、それぞれの陣営分けという事だろう。
「…凄い」
椿は、予想以上の迫力に圧倒される思いだった。
「おやあ、模擬戦闘を見るのは初めてですか?」
シャルンホストが覗き込んでくる。
「おい」
カイがシャルンホストと椿の間に割って入った。
「あまり近付くな」
「おやおや、そんなに邪険にしなくとも」
シャルンホストは残念そうに眉尻を下げる。
「オレ達は敵同士だ。軍人として敬意は払うが、馴れ合うつもりはない」
「そうですか…」
とシャルンホストが肩をすくめた所で、
「ようこそお越しくださいました、ツバキ殿」
ヒューゴ大将軍が姿を現した。
「あ…こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」
「おや、アンスバッハ殿は?」
エレオノールがいない事に気がつき、ヒューゴは周囲を見回した。
「エレオノール隊長は急遽会談に参加される事になって来れなくなりました。代わりに観戦させてもらうエマ・リッツっす!」
「…カイ・ネヴィルです」
エマ、カイが同時に敬礼した。二人ともやや緊張した面持ちなのは、相手が伝説的な武勇伝を持つ大将軍であるためだろうか。
(ん、そういえばヒューゴさんに解析を試してなかったな…)
と思い、椿はヒューゴに対し解析を実行する。いったいどれ程の能力値なのか、身構えつつも『解析』してみた所…。
指揮00 武力00 知謀00 政策00
(ええっ!?)
先程とは別の意味で驚いた。能力値が正常に表示されないのだ。
(どうしたんだろう…?)
何か理由があるのだろうか。例えば、能力を探られない特質を持っているとか、もしくは解析スキルが不完全なためか…。
「ツバキ軍師、いかが致しました?」
気がつけば、ヒューゴ大将軍が不審そうな顔つきでこちらを見ていた。それはそうだろう。片目を瞑り、何か探るような目つきでヒューゴを観察していたのだから。椿は慌てて、
「あ、あの…目に、砂が入っちゃって…」
と誤魔化した。
「そういえばさっきも片目を瞑っていたな。大丈夫か?」
カイが声をかける。
「はい、大丈夫です。そ、それより…模擬戦闘を観戦させてもらってもいいですか?」
「では、どうぞこちらへ」
ヒューゴは広場の南側へと一同を導いた。そこには、木で作られた階段状の観客席が設けられていた。5人はその一番上に腰掛ける。




