敵戦力6
「バウテン上将軍…」
バウテンの背後から声がかけられた。バウテンと共にこの場に来ていたエッカルトだ。
「止めるな、エッカルト将軍」
「いえ、止めるつもりはありません。あたしも…あなたと同じ気持ちですから」
そう言ってバウテンの隣に立つエッカルト。彼女もまたヴォルフラムと対峙するつもりだ。上官であるバウテンに対する想い、馬鹿にされたままでは終われないという感情が彼女を突き動かしている。
バウテンは一度彼女を横目に見て、止めようかと考え…しかし思い留まった。彼女も自分と想いが同じであるならば、止める訳にはいかない。
「イルメラ・エッカルト将軍…確か、巨大要塞の元副司令官じゃったか。ふん、敗軍の将が二人も揃って我に歯向かうとはのう」
ヴォルフラムは二人を鼻で笑った。
「で、お主ら分かっておるのか?我に逆らうというのがどういった意味を持つのかを?」
「…勿論です」
当然、死は免れないだろう。だが例え死すともせめて一矢でも報いたかった。
(いくら相手が大将軍であろうともあたしとバウテン上将軍の二人でかかれば一撃くらい…!)
バウテンは前線で戦うタイプの指揮官ではないが、それでも人並み以上に剣を使う事はできる。そしてエッカルトは己の腕に自信を持っていた。少なくとも巨大要塞の副司令官だった事は誰にも剣で負けた事は無い。
(大将軍…あんたの驚く顔を見てから死んでやるわ!)
そんなエッカルトの殺気を感じ取ったのか、ヴォルフラムは手にかけていた腰の剣を抜き放った。
(来る…!)
エッカルトも素早く剣を抜く。ここまで来ればもはや迷いはない。躊躇っていては一撃すら加える事もなく自身の体は両断されているだろう。
「はああ!」
気合と共にヴォルフラムに斬りつけた。相手の右脇腹目掛け斬り上げる鋭い一撃。そしてその攻撃は見事ヴォルフラムの体に吸い込まれていった。




