大将軍2
「『狂獣』ジークフラム・ガイセか…」
シャルンホストと向き合っていた男がジークフラムに鋭い視線を向けた。同時に、部屋の中にいた指揮官たちは身構える。
「おい、てめえ…強ええな」
ジークフラムと男の視線が交錯する。
「てめえが大将軍だろ?」
「おい貴様!場をわきまえろ!――エルヴィン閣下、お下がりを!」
帝国軍指揮官にひとりが、エルヴィンと呼ばれた男とジークフラムの間へ割って入った。青みがかった髪の青年だ。やや小柄な体格で、歳は二十歳を少し過ぎたばかりといった所だろう。
「俺はこいつと話してんだ!邪魔すんじゃねェ!」
ジークフラムの拳が帝国軍指揮官の顔面向かって放たれた。指揮官の顔にその拳が叩きつけられる――と思われたその刹那。その拳は受け止められていた。エルヴィンが青年を庇い受け止めたのだ。
「へえ…やるじゃねえか。さすがは大将軍」
ジークフラムは愉快そうな笑みを見せる。だが、エルヴィンは鋭い視線を向けたまま言い放った。
「ジークフラム・ガイセ独立竜兵隊長。君は自国の軍人のトップの事すらまともに知らないのか?」
「ああ!?」
「私は大将軍ではない。大将軍付副司令官、上将軍エルヴィン・グリュックスだ」
「んだと…」
ジークフラムの顔から笑みが消える。
「この軍のトップは大将軍じゃねえのか?どこにいやがんだ?ああん!?」
ジークフラムが一同を睨みつける。彼の見る所、この中にエルヴィンを上回る実力者はいない。そう判断したその時、
「ほう…面白い事にっとるなあ」
先ほどジークフラムが蹴破った部屋の入り口からそんな言葉が聞こえたきた。底響きのする声だ。それを聞いた瞬間、部屋にいた指揮官達が一斉に敬礼を行う。その様子でジークフラムは察した。
「てめえが大将軍か…」




