表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

543/1118

エレオノール・フォン・アンスバッハ

 レイアとの立ち合いを行った日の夜。場所は、エレオノールとツバキが寝所としている天幕の中。ベッドの端に腰かけるエレオノールに、椿は木製のカップを差し出した。


「はい、エレナ」


「ありがとう」


 エレオノールはカップを受け取る。そして口を付け、


「…おいしい」


 と笑顔を零した。


「でも、初めて口にする風味だ…。いったいこれはどんな香草(ハーブ)を…?」


「うん、これは炒った豆で入れたお茶なんだ」


「豆を炒ってお茶に…?それでこんな風味が出るなんて…」


 エレオノールは不思議そうにカップを見つめる。


「ツバキは凄いね、こんなものを生み出すなんて」


「ううん、僕も昔そういうお茶があるって聞いて…ちょっと試してみただけだから。でも、エレナの口に合うみたいでよかった」


 そう言って、エレオノールの隣に腰かけた。


 この世界に来てから、椿なりに色々な事を模索していた。例えば効率的な農業の模索や道具の改良など。もっとも、普段の軍務が忙しくそういった事柄に対して本腰で取り組む事はできていない。そんな中にあって、小さな事ではあるが元いた世界の知識を生かす事が出来た事を嬉しく思う。


(でも、この世界が平和になったら…もっと僕の知識を役立てたいな。――って、あれ…?)


 椿は今さらながらに気が付いた。自分はずっと先もこの世界で生きていく覚悟を決めている事に。最初の頃は、いつかは元の世界に戻りたいという気持ちがあった。でも…今は違う。この世界で生きていたいと思っている。そんな風に気持ちが変わった原因は、間違いなく彼の隣にいる女性の存在だ。


 そんな少年の心を知ってか知らずか、エレオノールは椿の想いに答えるかのように口を開く。


「それじゃあ、改めて話をするとしよう。アンスバッハ家の――私の事を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ