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聖騎士集結21

 エレオノール隊編成開始から7日目。この頃になると隊としての形はほぼ完璧に整っていた。


「ふぅ…」


 エレオノールは天幕の中で書類に目を落としつつ、息を吐いた。彼女の顔にははっきりと疲れの色が見える。エレオノール隊の編成はほぼ完了…とはいえ、彼女の仕事はそれで終わりではない。むしろ副司令官としての仕事はこれからが本番と言える。司令官であるカムラン、副司令官のミュルグレス、オスカーと共に軍全体の細かな進軍プランを調整していかなければならない。


「エレナ、少し休んだ方が…」


 椿が心配して声をかけた。エレオノールはにっこりと笑顔を作って答える。


「ありがとう、ツバキ。でもここが正念場だからね。君の方こそ、ちゃんと休めているかい?」


「うん、僕は大丈夫」


 実際は椿の体にも疲れが溜まっていた。しかしエレオノール程ではない…と少年は思っている。彼もエレオノール隊の再編成のために奔走しているが、基本的にエレオノール隊内に関する仕事ばかりだ。軍全体の決定に関わるエレオノール程心労は大きくない。


(エレナ、大丈夫かな…)


 椿が心配していると、


「客人を連れてきた」


 という声と共に入ってきた人物が二人。ひとりは重装歩兵部隊長となったカイだ。彼女の隣にいたのは…、


「やあ、エレオノール。それとツバキ少年」


 亜麻色の髪をポニーテールに纏めた女性。聖騎士序列第七位。慈愛の聖騎士パラディン・オブ・チャーリィ、レイア・リヒテナウアーだった。


師匠(せんせい)…いったいどうされたのですか?」


「いや、頼みたい事があってね。ちょっと手を貸して欲しいんだよ」


「それは――申し訳ありません」


 エレオノールは残念そうに頭を下げた。


師匠(せんせい)のお手伝いが出来るのであれば、喜んで――と言いたい所なのですが、どうしても手が離せず…」


「――行って来たらどうだ、エレオノール隊長」


 後ろに控えていたカイが前へ進み出た。


「少しの間くらいならあんたがいなくても大丈夫だ。隊内の事はエマ・リッツとホフマン老が。副司令官としての調整はオレが代行できる。…あんたの部下を信用してくれ」


「ネヴィル卿…」


「レイアはお前の師匠なんだろ。それも、昔は家族同然の付き合いをしていたと聞いた。家族は…大切にした方がいい。心配せずともお前のいない隙にヘルムート・リヒターが怠けていたらオレが斬り捨ててやる。だから、安心して行って来てくれ」


 ――いや、リヒターさんを斬り捨てたら駄目なんじゃ!?と思った椿だったが、いい話の最中なのでそこに触れるのはやめた。


「それに、この女は慈愛の聖騎士パラディン・オブ・チャーリィ…きっとついて行けばお前にとっても何かプラスになるはずだ」


「そうだよ、エレナ」


 椿もカイの言葉に同意する。


「久しぶりに会ったお師匠さんなんでしょ?二人で話したり何かをやったりする時間を過ごしても…いいと思うんだ」


「…ありがとう、ツバキ。ネヴィル卿」


 エレオノールは立ち上がり、レイアへと向き直る。


「ツバキとネヴィル卿のご厚意に甘えさせていただきます。…どうかご一緒させてください」

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