聖騎士集結17
「えっと…リヒターさん、ズメイさん…?」
「…ツバキか」
ズメイと顔を突き合わせていたリヒターが椿の方を向いた。
「どうしたんだ?サボりにきたか?」
「おいおい、リヒターの旦那。あんたじゃねえんだから。軍師殿はサボったりなんかしねえでしょ」
「ま…その通りだな」
ズメイの突っ込みにリヒターは軽く肩をすくめて見せる。先ほどまで深刻な表情をしていたから何事かと思ったが、この様子では差し迫った自体が起きたという訳ではないようだ。
「えっと、僕は各部隊の編制状況を確認して回ってるんですけど…軽装歩兵部隊はどんな感じですか?」
「調子は上々だ、問題ない。――編成の方はな」
「編成の方はって事は…それ以外で何か問題が…?」
「ああ。敵についてだ」
「敵…?」
「俺から説明します」
ズメイが口を開いた。
「おそらく、今度の敵軍には…ジークフラム・ガイセ率いる特務竜兵隊が参加してるはずです」
「なっ…!」
ジークフラム。その名を忘れた事は無かった。ヌガザ城砦で椿達を窮地に追いやった人物。そして――ユンカースを殺した男。
「俺の分隊の竜達が昨日から異様に騒いでんです。最初は何事かと思ったんですが…色々考えていくうちに、他の竜が近付いてるから騒いでんだろうって事に思い当たった訳で。で…この北統王国にゃあ野生の竜は住んでやせん。おそらく独立竜兵隊の竜を感じ取ったんです」
「…」
「勿論、俺の予測が外れてる可能性もありますがね」
「いえ…それでも警戒しておくに越した事はありませんね。投斧の準備もしておかないと」
「頼んます。それと…ひとつわがままを聞いてもらっていいですかい?」
「え…何でしょうか」
「捕虜になってスルズ市の牢にいる槍騎士長と面会させてもらえやせんか?」




