聖騎士集結12
会議の翌日。エレオノール隊の面々は新編成に向けて各自奔走していた。増員された兵を隊長のエレオノールがそれぞれの部隊に割り当て、各部隊長は割り当てられた兵を自身の部隊に編成していく。椿はエレオノールの補佐として、新たな中級、下級指揮官を兵達の中から任命する責務を負っていた。
新しく赴任した兵や指揮官を可能な限り解析で分析し、
(この人は指揮が64あるのか…ただの軍曹のままじゃ勿体ないな)
と思えば下級指揮官に抜擢し、
(ん?この人、弓隊の兵科適性がDなのに、弓兵隊の分隊長なんだ…それより、適正Bの軽装歩兵隊に配置換えした方がいいかもしれない)
と思えばそのように配置換えを行った。ほとんどが元聖騎士配下の兵だけあって、兵の質が高い。エレオノール隊は順調に作り替えられていった。しかし、その中で椿の頭を悩ませるものがひとつ――。
(やっぱり、ボゥさんの抜けた穴が多きい…)
指揮84、武力89、さらに重装歩兵隊適正Aという高い能力を持つボゥの代わりとなる人物は容易には見つからなかった。質の高い者が多いとは言っても、さらすがにボゥ程の逸材は見つからない。そんな事を考えていると、
「忙しそうだな」
と、エレオノールと椿が作業を行っている場所に現れた人物がひとり。
「カイさん…」
「よう、ツバキ。それと…アンスバッハ殿」
「こんにちは、ネヴィル卿。いったいどうなされたのですか?」
「編成で困っている事があるのではないかと思ってな。…少し、話をするために来た」
「話…ですか?」
「ああ。ボゥの抜けた重装歩兵隊の部隊長についてだ」
まさしく、エレオノールと椿が頭を悩ませていた事についての話題だった。
「代わりの部隊長は見つかったのか?」
「いえ…まだです」
椿が答えた。
「そうか、まあボゥはオレの従妹だからな。あんな優秀な重装歩兵部隊長はそうそういない」
カイの声音にはやや自慢げな響きが混じる。他人を認める事が少ないカイだが、幼い頃から実の妹のように接してきたボゥの存在は心の底から誇りに思っているのだろう。
「だが…ひとりだけ、ボゥに勝る重装歩兵指揮官に心当たりがある。それをエレオノール隊に推挙するためにオレは来た」
「それは…大変ありがたいお話です…!」
エレオノールの表情に喜色が浮かぶ。もしカイの言葉が事実だとすれば、編成上最大の問題は解決する事になる。
「でも、ボゥさん以上の重装歩兵部指揮官って…?」
ボゥの穴を埋める――どころか、ボゥを上回る人物などそうはいないはず。それはいったいどんな人物なのか…そんな疑問の込められた椿の言葉に、カイ答えを返す。
「オレだ。――オレを、この部隊の重装歩兵部隊長として使ってくれ」




