聖騎士集結11
野営地。エレオノール隊用の天幕内。現在、この中にはエレオノール隊の幹部が集結していた。全体会議で決められた議題をエレオノール隊の面々でどうやって実行していくかを話し合うためだ。
「エレオノール隊長が聖王国最強軍の副司令官、そして五万人の指揮官っすか…」
エマがしみじみとした口調で言った。その言葉にホフマンが頷く。
「そうですね。ただの百騎隊だった頃が遠い昔のようです。おそらく、ここまで急激に昇進を果たしたのは正義の聖騎士と帝国軍のヒューゴ大将軍くらいでしょう」
「でもそれって、自分も五万人の部隊の副長って事っすよね…うう…自信ないっすよ…ホフマンさんかリヒターさん、代わってくれないっすか…?」
「私は見た通り老いぼれです。副長になったとして、この先エレオノール隊長を支えていく事はできません。エマ殿」
「…俺も無理だな」
リヒターが肩をすくめた。
「こんな大部隊の副長なんてめんどくせえ事、かんべんして欲しいぜ…てのもあるけど、俺は別動隊を率いて行動する事が多いからな。いざという時に隊長の代理を務める副長は向いてねえよ。昔俺がいたユンカース隊みたいな小規模部隊ならともかくな」
「うう…やっぱり、自分がやるしかないんっすね…」
「エマなら大丈夫だよ。…僕が保証する」
そう言って椿は微笑みかける。別に気休めで言っている訳ではない。彼女の持つ副長適正、そして今まで懸命に副長としての責務をまっとうしてきたエマの姿を見ているからだ。
「――なんて、僕なんかに保証されても大して嬉しくないかもしれないけど…」
「そんな事ないっすよ!ツバキっちに大丈夫って言われると…なんか、本当にやれそうな気がしてくるんっす…」
「うん、その通りだね」
とエレオノールが頷く。
「正直、会議の場でミュルグレス殿に副司令官の地位を持ちかけられた時は私も不安だった。けど、あの場で椿がああ言ってくれて…私の気持ちも固まった。皆にも負担をかける事になってしまうけれど――どうか、エレオノール隊の再編成を手伝って欲しい。そして、次の戦いで勝利を…平和を掴み取ろう」




