聖騎士集結10
会議で話し合われた主な議題のひとつは、エレオノールの副司令官就任という形で決着を見た。
そしてもうひとつ話し合われた議題。それは進攻開始をいつにするかというものだ。
「十日後からですね」
とミュルグレス。
「何故十日後なのか。それは例年、この地方においては今の時期に雨が続く事が多いためです。過去三十年のうちで27回、この時期に長雨が降っています。それが晴れるのが今からおおむね十日先」
「ちょっと待て、どうしてお前がそんな情報を持ってる?」
そんなカイの質問に、
「気象情報の把握は作戦の基本です」
と事もなげに答えるミュルグレス。
「雨の中行軍しても能率は上がらず兵の疲労は増すばかり。それならば十日間ここで待機し部隊の編成に充てた方がいいでしょう」
「だが、ここで十日も待機すれば敵に猶予を与える事になるんじゃないか?」
「私の入手した情報によれば、大将軍はすでに北統王都に入っています。十日後に進軍しようが、今進軍しようが敵の準備という点ではあまり変わりません。下手に焦るよりも万全の体勢を整え攻め入りましょう」
「しかし、他にも…」
「雪の心配ですか?ネヴィル卿」
「…ああ、そうだ」
心中を見透かしたような言葉に少し不服そうな素振りを見せつつもカイは頷く。
「その点に関してもご心配なく。雪が降り始めるのは、例年通りであればまだ二十日以上余裕があります。もっとも、今から28年前に一度だけ早く雪が降った年がありましたが…、その年にしても、粉雪が振ったのみで積雪はありませんでした。まだ余裕はあります」
ここまで理路整然と説明されればミュルグレスの意見に反対する者もいなかった。結果、進軍開始は十日後と決定した。それまでにエレオノールは、聖王国軍副司令官に相応しいだけの兵数に膨れ上がった自身の隊を改めて編成する必要があるという事だ。




