聖騎士集結9
「ぼ、僕ですか…?」
突然話を振られ戸惑いを見せる椿。それも仕方のない事だろう。エレオノールならともかく、まさかこのような状況で椿に話が振られるなど誰も思わない。
「そうだよ。僕は君の意見を聞きたいんだ。僕は、誰かがその地位に相応しいかを判断するにはその人に最も近しい人を見るべきだと思っている。ツバキ軍師…君は、一番近くでアンスバッハ殿を支え続けてきた。そんな君から見て、エレオノール・フォン・アンスバッハ殿は副司令官に相応しいと思うかい?」
「それは――」
それはもちろん、と反射的に答えそうになり思いとどまった。自分は本当にそう思っているのだろうか。エレオノールが今よりも高い地位につけばさらなる負担を彼女に強いてしまうのではないだろう。それでも、自分は彼女を副司令官に推薦するべきだろうか…。そう自問し――そして口を開く。
「エレナ…エレオノール隊長は、副司令官の地位に相応しいと思います」
「それはどうして?」
「エレオノール隊長は、いつだってみんなの事を…沢山の人達が平和に暮らせる事を考えています。そして、理想を掲げるだけじゃなく…それを実現するために、誰よりも懸命に行動しています」
少年は、この世界に来た日の事を思い出す。
(エレナは初めて会った時からそうだった。処罰を受ける事を恐れず僕を救ってくれた…)
「勿論、理想があってそのために行動すれば全てが上手くいく、なんて言うつもりはありません。経験不足だという意見も、もっともだと思います。だけど、エレオノール隊長には理想を実現するだけの能力があります。それでも足りないと言うのなら…僕が支えます」
「うん」
カムランは頷き、その端正な顔に柔らかな笑みを浮かべる。
「決めたよ。三人目の副司令官はアンスバッハ殿だ」
その決定に異を唱える者はいなかった。
こうしてエレオノールは副司令官に就任。と同時に、聖騎士序列二位、三位と肩を並べる存在…聖王国軍の実質的な№2の一角へと昇任を果たした。




