聖騎士集結
「ふう…寒いなあ…」
朝。天幕から出ると同時に、椿は外の大気の冷たさに身震いする。
(でも、肋骨の痛みは…かなり引いてきたみたいだ)
アイヒホルン軍との決戦からすでに三週間が経過していた。椿の負傷はほぼ完治しつつある。
「おはようございます、ツバキさん」
そう声をかけられ振り向けば、優し気な顔立ちをした少女の姿。エレオノール隊救護分隊長、カトリーヌ・ロランだ。
「おはようございます」
椿も挨拶を返す。
「負傷した部位の痛みはどうですか?」
「はい、かなり引いてきました。もうほとんど痛みは感じません」
「…本当ですか?」
椿の顔をじっと覗き込むロラン。
「心配させまいとして嘘ついてるんじゃないですか?」
「ほ、本当ですよ…!」
「エレオノール隊長に誓えますか?」
「は、はい…エレナに誓って」
「ふふ、それなら信じましょう」
にっこりと微笑むロラン。
「次の戦いでは怪我しないでくださいね。…なんて、軽々しく約束できないでしょうけど」
ロランも、前線に出る人間が『絶対に負傷をしない』などという事はあり得ないと分かっている。戦う以上、一定の確率で負傷してしまうのは避けられない。
「でも…出来るだけ自分の体を大事にするように…ね」
「はい、肝に銘じて置きます。それに…次の戦いでは、頼りになる方達が参戦してくれますから…」
「聖騎士七騎、ですね。確か、今日全員到着されるんでしたよね」
「はい」
頷きつつ、椿はまだ見ぬ聖騎士達に思いをはせる。いったい、どのような人物達だろうか…と。




