今後22
グロスモント軍野営地。カイは自身に与えられた天幕内でベッドに横たわり天井を見上げる。
(ツバキは今頃何をしているんだろうな…)
そんな事を考える。
(アンスバッハ殿と同じ天幕に寝泊まりしていると言っていたな)
エレオノール・フォン・アンスバッハの姿がカイの脳裏に浮かび上がる。自信家のカイをして、エレオノールには一目置かざるを得ない。
(見事な騎馬隊の運用、部下からの信頼、凛とした気品。…それに、オレより胸も大きいな)
カイはベッドの上でごろりと寝返りをうった。
(ツバキは、やはりアンスバッハ殿の事が好きなのだろうか…というか…い、一緒の天幕で寝泊まりしているという事は…もしや、あの二人は恋仲に…)
毛布を跳ね除け、カイはがばりと起き上がる。
「ええい…!そんな事は無い!…はずだ!くうっ…」
眠ろうと思って横になったのに、目が冴え冴えとしてしまった。これではしばらく眠りにつく事はできないだろう。
「どうせ寝れないなら…鍛錬でもするか」
カイは剣を取り、天幕の外へ出る。風の冷たさは冬の訪れを感じさせる。だが、かまわない。信仰の聖騎士は剣を振る。聖騎士の名に恥じぬ己であるために。自分の事を慕ってくれる従妹に恥じぬ自分であるために。そして…ツバキの隣に立つに足る存在であるために。




