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今後12

「アイヒホルン殿は勝利の可能性が失われたと判断するや部下を残し逃走。自身のみ安全圏に逃れました。そんな方のために(わたくし)に危害を加えるんですか?」


「…確かにアイヒホルン閣下のなされた事には私としても思う所はある。だが…」


「だが、じゃないんですよぉ!」


 シャルンホストは上体を前へ突き出した。ディルクの剣の切先が喉に僅かに突き刺さり、一筋の赤い血が流れ落ちる。


「ムカつきませんでしたか!?許せないと思いませんでしたか!?――怒りをぶつけたいと思いませんでしたか!?」


「突然何を…」


「ねえ、自分を取り繕うのはやめましょうよぉ!」


 シャルンホストはゆっくりと上体を前へ傾ける。ずぶり…と剣先が首に入り込んだ。


 ディルクは思わず気圧され、剣を引き半歩後ずさる。


「あれえ?(わたくし)を殺すんじゃなかったんですか?あとほんの少し剣を突き出せば私は死んでいましたよお?」


「貴殿はいったい何を考えている…」


「そりゃあ勿論、楽しい事ですよ!ねえ、(わたくし)と一緒に楽しい事をしましょうよ!理不尽な世界を壊して!潰して!殺しましょう!それはきっと――素晴らしいですよ」


 首筋から血を垂らしながらケタケタと笑うシャルンホスト。その姿はさながら悪魔だ。


 だが、ディルクはそんな悪魔を前にして心が揺れてしまう。アイヒホルンの言葉では感じる事のなかった高揚感。


「前々から、あなたは(わたくし)と同類だと思っていました。だからこそ、こうして会う機会を求めたのです。…さあ」


 悪魔は手を差し出した。


(わたくし)と共に、楽しい事をしようじゃありませんか」

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