栄賞9
椿はオスカーの顔を見返す。そして何かを決意したように小さく頷くと、一歩前へ踏み出した。
「ありがとうございます。僕はまだ、自分が表彰されるような活躍をした実感はないですけど…でも、もし本当にそうなんだとしたら」
少年は金色の杯に手を添える。
「今後も、ひとりでも多くの人を救えるように…頑張りたいと思います」
オスカーは頷くと同時に杯から手を離す。椿の手に黄金の杯の重みがずっしりと伝わった。
「正直な所、俺は君にこの賞を与えるべきかどうか迷っていた。栄誉を与えるという事は、同時にそれに伴う重圧をも与える事になる。それを君に背負わせるのは酷かもしれない。そんな風に考えていたのだが…君を特別栄賞に選んで間違いはなかった。今は、そう思っている」
「僕も、オスカーさんにそんな風に言ってもらえて嬉しいです。…皆さんにも一言話をさせていただいていいですか?」
「もちろん」
椿はオスカーに微笑み返すと、この場に集まった一同に向き直った。
「非力な僕は、エレナ以上に皆さんに助けられています。だから、ティネンの街を守る事が出来たのも…やっぱり皆さんのおかげだと思うんです」
椿はひとりひとりの顔を見回した。エレオノール、エマ、ホフマン、リヒター、カイ…その他、共に今回の戦いを乗り越えた仲間達を。
「でも、こうやって皆さんの代表として表彰を受けた以上…それを裏切らないように、全力を尽くしていきたいと思っています。ですから、えっと…」
ルカは黄金の杯を抱きしめ、一同に対して頭を下げた。
「僕に駄目なところがあれば、何でも言ってください!もっともっと沢山のものを守れるように…平和な世界に近付けるように頑張ります!」




