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栄賞2

「第三等栄賞、ヘルムート・リヒター…前へ」


「…うっす」


 名を呼ばれ、リヒターが前へと進み出る。


「貴公には別働隊の指揮官という重責を担って貰った。感謝する」


 オスカーは薔薇の形をした銅色の勲章を差し出した。


「いやあ、俺は対して活躍しなかった気もするんすけどね。歩兵部隊の勝利を決定付けたのは援軍だった訳ですし」


 リヒターは勲章を受け取りつつも肩をすくめた。


「いや、援軍が到着するまで持ち堪える事が出来たのは貴公の指揮があったからこそだ」


「…ま、そういう事にしときますか」

 

 そう言って、リヒターは元いた列へと戻る。


「続いて…同じく、第三等栄賞。ボゥホート・ネヴィル。ただし本人不在のため、代理人…カイ・ネヴィル。前へ」


「ふん」


 鼻を鳴らしながらオスカーの横へ進み出たのは、カイだ。ボゥが怪我で療養中のため彼女が代理として勲章を受け取った。


「ボゥホート・ネヴィル重装歩兵部隊長は今回の戦いで歩兵隊の戦線維持に大きく貢献したと報告を受けている。さらに、負傷しながらも最後まで戦い続けたその闘志も感服に値する」


「当然だ。オレの義妹(いもうと)だからな」


 カイは代理とはいえ勲章を受け取る立場でありながら尊大な態度を崩さない。だが、オスカーもそんなカイの振る舞いには慣れたものなのだろう。別段気を悪くした様子も見せず、


「それと、貴公に対しても礼を述べさせてもらいたい。援軍、感謝する――」


 カイはあくまで援軍として参戦したのであって、グロスモント軍の正式な指揮下にはない。それ故に栄賞の対象からは外されている。だが、彼女の活躍がなければ勝利は難しかった事も、オスカーは分かっていた。それ故にあくまで私的に…という立場であるが、感謝の言葉を述べたのだ。


 それに対し、カイは『当然だ』とばかりに胸を張っていたが、ふと何かを思い出したように口を開く。


「まあ、オレとしても…お前に感謝しないでもない」


「貴公が礼とは珍しいな。しかし、何に対する感謝だろうか」


「オレだって礼くらい言うさ。ツバキを…再びオレに巡り合わせてくれた訳だからな」


「…ツバキ君を?」


「ああ」


 カイは頷いた。


「お前と…そしてアンスバッハ殿の指揮下だったからこそ、ツバキも過酷な戦いを生き抜く事が出来たのだと…思う。――その事に対する感謝だ」

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