栄章
アイヒホルン軍との戦いから二週間後。商業都市ティネンの郊外。そこにはグロスモント軍の野営地が設けられていた。いや、野営地というには少しばかり立派すぎるかもしれない。簡易的なものだが、そこには天幕に混ざって木製の住居が立ち並んでいた。
これらはグロスモント軍が建設したものではない。ティネンの住民によって建設されたものだ。グロスモント軍はティネン市民の信頼を勝ち取っていた。その理由は、アイヒホルンによる焼き討ち計画をグロスモント軍がそれを阻止した事がティネン市民に広がったためだ。
ティネン市民にとってみれば、グロスモント軍は自分たちの生きる糧を守ってくれた英雄と言える。その英雄に対し、せめてもの礼を――という事で、彼らが自主的に建築してくれた簡易住居だ。あくまで小屋といった程度のものだが、それでも兵士たちにとってみればありがたい事だった。
そんな木造建築物のひとつ――他の小屋よりはふた周り程大きな建物。本営として使っているそこに、グロスモント軍の主要メンバーが集結していた。
「それでは、先の戦いにおいて活躍した者に対し栄章を授与する」
一同に対しグロスモント軍総司令官、オスカー・グロスモントが発言した。栄章とは、上将軍以上の地位にある人物が授与する事のできる栄誉賞である。国から与えられる国家勲章に準じる価値を持つ。
「栄章など不要だと言う者もいるだろう。また、このたびの勝利は全ての指揮官、兵士達の活躍によるものだと思っている。栄章を与えるのであれば、全ての人間に与えるべきだ…と言われれば俺も同意せざるを得ない。だが、特別に活躍した者を選び出し栄章を授与するのが軍人の慣い。どうか快く受けてくれるとありがたい」
そう前置きして、オスカーは集まった面々を改めて見渡した。そして改めて口を開く。
「まずは第三等栄章――」




