海賊と聖騎士6
海賊船内、船長室にて。テーブルを挟み椅子に腰掛けるは、海賊船団の頭領。彼の脇は数名の海賊達で固められている。対するは、正義の聖騎士。その横には慈愛の聖騎士の姿もある。
「なるほど、な…俺らは一杯食わされたって訳か」
海賊の頭領は、自分たちが見逃した大公国船団の正体がカイ達聖王国軍であった事を知らされた所だった。
「あいつらはどうも臭えと思ってたんだが…上手い事誤魔化されちまった」
「どうする?」
正義の聖騎士の傍に立つ慈愛の聖騎士が問いかけた。
「騙されたのが気に食わないってんなら、もう一戦やるかい?」
「いいや」
頭領は首を振る。
「んな事をした所で俺らには何の得もねえ。聖王国軍を通しちまったってのは、北統王国にゃあ悪い事をしたが…」
「あんな奴らの事なんて気にする必要ないですぜ、お頭。北統王国の奴ら、俺らを見下しやがって…」
「お前は口を挟むんじゃねえよ」
後ろに立つ海賊の発言を頭領が叱る。その後、正義の聖騎士に向き直り肩をすくめた。
「…まあ、これ以上争うつもりはねえよ」
「それなら良かった」
正義の聖騎士のそんな言葉に、頭領は「はっ…」と笑って見せる。あまり人相のよくない男だが、こうやって笑うとどこか愛嬌がある。
「俺が戦わないと分かってて話をしたんだろ?」
「ああ。無益な戦いをする人間には見えなかったからね」
「そうだな、俺ら海賊はしょせん金の亡者だ。名誉や誇りのために戦う騎士様からしてみりゃあ、くだらねえ存在だろうが…」
「いや――くだらないなんて思わないよ」
正義の聖騎士は言った。
「あなた達は立派だ」
「俺たちが立派?おいおい、よしてくれよ。さっきから言ってるように、俺らは金のために戦ってんだよ」
「確かにそうかもしれないね。けれど、それは手段であって目的ではない。違うかい?」




