海賊と聖騎士3
獅子奮迅の活躍で海賊達を迎撃していく慈愛の聖騎士だったが、さすがに相手の数が多い。徐々に聖王国船の中に海賊が充満していく。
「…」
慈愛の聖騎士は、刺突剣を振るい海賊達の戦闘力を奪いながら何かを伺っていた。そして、『その時』が来た。突如海上に突風が吹いたのだ。海賊船、聖王国船共に僅かにバランスを崩す。船が転覆するような大風ではない。だが、それで十分だ。
「今だよ、筆頭!」
「ああ、了解だよ」
慈愛の聖騎士の声に答え、ひとりの男が船倉から甲板上へと姿を現した。
「騎士…?」
海賊の誰かが呟いた。そう、その人物は『兵士』ではなく『騎士』だと一目で分かった。その理由は単純、男が馬に乗っていたからだ。
「船の上で、馬…?」
「バカか…?」
そんな海賊の呟きももっともな事と言える。甲板上にはさまざまな構造物がある上に、船は常に揺れている。馬に乗った所でその機動力を活かす事はできない。そう、普通の人間であるならば。
「それじゃあ…行くよ」
そう言って、男は愛馬の背を軽くポンと叩いた。白金色の髪、白銀色の甲冑。聖騎士筆頭、正義の聖騎士を乗せて彼の愛馬は船上を走り出した。




