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決着後

 夕刻。メギド平原の大地は夕日を受け緋色に染まっていた。そんな中、聖王国軍本営に集まるのはグロスモント軍の主要メンバー達。


 この中には援軍としてグロスモント軍に加わったカイの姿もある。ただし、エレオノールと叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンスは現在不在だ。


 総司令官、オスカー・グロスモントは一同を見回し口をいた。


「貴公らのおかげで勝利を手にする事ができた。総司令官として礼を述べさせてもらいたい――ありがとう」


 その言葉に対し、一同はそれぞれの反応を示す。エマやホフマンは僅かに微笑み、リヒターは「ようやく終わった」とばかりに軽くため息を吐く。


「貴公にも礼を言わせてもらいたい。よく窮地に駆けつけてくれた、信仰の聖騎士パラディン・オブ・フェイス


 カイはふん、と鼻を鳴らして答える。


「お前の方こそ頑張ったじゃないか、勇壮の聖騎士パラディン・オブ・カレッジ。胸に槍が突き刺さって危うく死にかけたと聞いたぞ」


「ああ。しかし、まだまだ死ぬ訳にはいかない。帝国の侵攻を完全に退けるまではな」


「――そうだな」


 カイは頷く。


「今後の方針を示す前に…まずは現状を共有しておこう。ガレス、頼む」


「はい」


 オスカーに促されガレスが立ち上がる。


「まず、敵の状況ですが…アイヒホルン軍は総司令官ハインツ・フォンアイヒホルンおよび副司令官コンラート・バルクホルンの死亡によって壊滅。上級指揮官については、精鋭槍騎士一番隊隊長レオ・ゲルラッハ。二番隊隊長ロルフ・リューガー。三番隊隊長ユルゲン・バイルシュミット。四番隊隊長クリスタ・ファーナの4名が捕虜となっています」


 槍騎士長のうち、レオはオスカーが。ロルフはカイが。ユルゲンはエレオノールが。クリスタはハティが。それぞれ打ち倒した事により捕虜となっている。五番隊隊長のディルクのみはカイ達が援軍に来た時点で早々に戦場を離脱。唯一逃走する事に成功している。


「続いて敵兵の状況です。上級指揮官の多くが戦闘不能になった後も戦い続けていたアイヒホルン軍の兵士たちですが、総司令官アイヒホルンの死亡によりその多くが投降。捕虜となりました。現在、捕虜の受け入れおよび管理は叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンス殿が行っています。さらに、ツバキ殿のもたらしてくれた情報…スルズ穀物庫の焼き討ち計画ですが、アンスバッハ殿が鎮圧に向かい阻止に成功しています」


 捕虜の受け入れを叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンスが、スルズ穀物庫の焼き討ち阻止をエレオノールが担当しているのはそれが両者の得意とする分野だからだ。叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンスは人員管理に秀でており、騎馬を率いさせればエレオノールの行軍速度は群を抜いている。


 もっとも、ここにいるメンバーとて仕事が終わった訳ではない。この会議が終わればそれぞれが持ち場に戻り、負傷兵の把握や受け入れた捕虜の護送など指揮官としてやらなければならない事を抱えている。


「しかし、同盟国の穀物庫を焼き討ちを計画するなんて…とんでもない計画だ」


 ガレスが呟く。その言葉にオスカーも同意した。


「その通りだな。人道に外れた行いだ。だが、それ故に焼き討ちが成功すれば我が軍、そしてこの近隣一帯の民衆も大きな被害を被る事になっただろう。事前に情報を掴んでくれて本当に助かった。ありがとう、ツバキ君」


「まあ、オレの認めた男だからな」


 と、なぜか得意げに胸を貼るカイ。椿はというと、その横で安堵の表情を浮かべていた。


(シャルンホストさんの狙い、この先の戦い…まだまだ懸念はある。だけど…)


 それでもこうして無事に戦いを終え、みんなの元気な姿を再び見る事が出来た。今はそれを喜ぼう。少年は、そう思っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] “~懸念はある。だけど…)  それでもこうして無事に戦いを終え、みんなの元気な姿を再び見る事が出来た。今はそれを喜ぼう。少年は、そう思っていた。” そうだねツバキ!懸念はあるが…ラッパ野…
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