決戦95
話はカイがアイヒホルンの隠れ家に突入した時点に遡る。
「な、なんだお前は!?」
小屋の中の兵たちは突如現れたカイに対して剣を構える。
「聖王国軍か!?」
「閣下、お下がりを!」
二名の兵士がカイに向かって剣を振りかぶった。
「たった二人でオレを止められるつもりとは…舐められたものだな」
カイは片方の兵士の懐に潜り込む形で体当たりを仕掛ける。
「ぐっ…」
密着され、兵士は剣を振り下ろす事ができない。そんな兵のボディにカイは拳を叩き込んだ。さらに続けて顎への肘打ち。兵はカイに覆いかぶさる形で失神した。
「く、くそ…!」
もう一方の兵が剣を振り降ろそうとするが、失神した兵がカイの盾となり攻撃する事ができない。
「遅い!」
敵が戸惑っている隙を突き、カイは身を翻す。気が付けばまたもや兵の懐に潜りこんでいた。そこからは、先ほどの繰り返し――拳と肘打ちで二人目の兵士も失神させた。
現在、彼女は甲冑に身を包んでいる。つまり、腕も鋼鉄製の籠手に覆われているという事だ。まさしく鉄の拳に鉄の肘。『鉄拳』と『肘鉄』による攻撃。ひとたまりもない。
(やはりツバキの考えに従って正解だったな)
カイは、小屋に突入するに際してツバキからアドバイスを受けていた。
「こういった狭い小屋の中で長剣を振り回すのは得策じゃないと思うんです」
というのが少年の意見だった。カイはそれを採用したのだ。そしてその考えは見事的中していた。敵兵は狭い室内で剣を使うのに苦慮している。
「相手はひとりだ!行け!死んでも私を守れ!行けえ!」
アイヒホルンが絶叫する。新たに二人の兵がカイに群がった。先ほどの兵士の反省を踏まえて、カイを剣で倒そうとするのではなくしがみついての足止めを試みる。だが、聖王国軍の最高峰たる聖騎士、カイにとってそんなものを捌くのは容易い事だった。
――数秒後。
部屋の中には、失神した四名の兵士の姿。新たに挑みかかった二名もカイの攻撃によって叩きのめされていた。しかし、部屋の中にアイヒホルンの姿はない。
「隠し扉か」
小屋には、入り口とは別に外へと繋がる扉が隠されていたのだ。兵達の稼いだ数秒の間に、アイヒホルンはそこから脱出を果たしていた。




