決戦86
オスカーは手勢を率いアイヒホルン軍本陣へと駆ける。
「本陣を守れ!敵を跳ね返せ!」
「アイヒホルン閣下の元には行かせるな!」
帝国軍の中級指揮官達が叫ぶが、オスカーの進撃を止める事は出来ない。バルクホルンが討ち取られた今、オスカーの圧倒的武勇を押し留める事の出来る者は皆無だ。
怒涛の勢いで敵兵を蹴散らし、オスカーは敵本陣の旗の立てられた天幕へと迫る。
「ここは通さん!」
本陣前を固めるのはさすがに精鋭らしく、頑強な抵抗を見せる。護衛隊長らしき人物が戦斧でオスカーの大剣を受け止めた。
「やるな!だが――押し通る!」
オスカーの腕に力が籠められる。レオ、バルクホルンと連戦を続け彼の肉体は疲弊していた。だが…その意気は、むしろ最高潮に高まっている。受け止められた剣をそのまま力任せに降りぬいた。
「馬鹿な…」
戦斧は吹き飛ばされ、大剣が甲冑を断ち割った。護衛隊長はその場でがっくりと膝をつく。
「進むぞ!」
最後の守りを抜け、オスカーは本陣天幕へと到着した。そのまま勢いを止めず、剣で天幕を切り裂き中へと入る。だが――。
「誰もいない…?」
オスカーにやや遅れ天幕に突入したガレスが眉をひそめた。
アイヒホルン軍本陣天幕は、もぬけの殻となっていた。




