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決戦80
ユルゲンの捕縛という事実は投石器守備部隊に大きな衝撃を与えた。予想通り守備部隊の士気は落ち、逃亡、降伏する兵が相次いだ。だが、一部の兵は最後まで抵抗を続けた。
「続けろ!投石を止めるな!」
狂ったように叫び、投石器から岩塊を発射し続ける。彼らは半狂乱となっていた。何しろ、友軍の兵に対して攻撃を続けていたのである。
北統王国兵と帝国兵、出身は違えど今は同じ所属。しかもここ数日は行動を共にしてきた。行軍中などは会話を交わす事もある。となれば、どうしても情が沸いてくる。北統王国兵にも家族がいて、大切なものがあって…そのために懸命に戦っているのだという事が分かってしまう。
そんな仲間を、彼らは打ち砕いたのである。自らの発射した岩塊によって。その事実に耐え切れず、錯乱状態に陥ってしまった兵たちが一定数存在したのだ。
エレオノールはそういった兵の鎮圧に時間を取られる事となった。
その頃――オスカーとバルクホルンの戦いは決着を迎えようとしていた。




