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決戦64
前方の高台へは直進する事はできない。切り立った崖になっているからだ。崖を迂回し、比較的緩やかな坂を上りグロスモント騎馬隊は高台へと駆け進んでいく。
(よし…足元のぬかるみは消えた!)
坂までは水が流れ込んで来なかったのだろう。足元の泥は消え、騎馬隊の速度が増す。坂を上り切り、高台の上に到着する。高台の上は開けた場所だった。万単位の兵が布陣する事も可能な広さがある。そこにそれはあった。投石器。そして、アイヒホルン軍の本陣を示す総大将旗。布陣する帝国兵は、エレオノールの予想通り約一万五千。
「ここが勝敗の分かれ目だ!行くぞ!」
オスカーが前方目掛け剣を振り下ろす。その切先を見つめ、グロスモント騎馬隊が全力で駆けた。
「敵を止めろ!ここを守り切れば我ら帝国の勝――!」
帝国軍の最前線に立つ中級指揮官が声を張り上げた。だが、その言葉を言い終わる前に、彼の体は薙ぎ払われ宙に吹き飛んでいた。オスカーの振るった大剣によって。




