決戦60
グロスモント騎馬隊に北統王国兵が殺到していく。彼らの役目はあくまでも足止めだ。例え騎馬隊を倒す事が出来ずとも、この場に釘付けに出来ればそれでいい。それで準男爵の地地位が手に入るのだ。もし死んだとしても、家族は生涯に渡り安泰だ。――と、彼らは信じている。
グロスモント騎馬隊、そして北統王国兵を投石器から発射された岩塊が襲う。
「くっ…」
エレオノールは、周囲の敵を薙ぎ倒しつつ降り注ぐ岩を回避した。少し離れた位置では、自身の頭目掛け降り注いで来た岩の塊を、オスカーが手に持った大剣で打ち砕いていた。超人的な直感と膂力を持つ彼だから出来る芸当だ。しかし、彼の指揮する兵は超人ではない。
頭上から降り注ぐ岩は、敵味方の区別なく肉体を打ち砕いていく。意識的に回避できるだけの実力を持つ者は、ガレス、エマ、ホフマンなど限られた数名のみだ。それ以外の兵士は、ただただ自らの体に岩が命中しないよう運に任せる他はない。
この状況が続けば、グロスモント騎馬隊、北統王国兵共に多くが死傷し壊滅状態に陥るだろう。そして万全の状態を保つのは――現在戦いに加わっていない帝国兵のみ。エレオノールやオスカーが生き残ったとしても、兵が壊滅した状態では帝国軍とは戦えない。最後に笑うのは、アイヒホルンとその配下という事になる。
――引くべきか。
そんな考えがエレオノールの脳裏を過る。だが、すでに北統王国兵と乱戦状態に入っている以上、撤退の最中に大きな犠牲が出る事になるだろう。
――ならば…活路は、前にしかない!
エレオノールは前方の高台に目を向ける。投石器から岩が打ち出されているあの場所を奪取する事が出来れば、この状況を打開する事が出来る。




