決戦51
「カイさん」
馬から降りた椿は、ロルフとの戦いに決着をつけたカイに近付いた。
「ツバキ…!体の方は大丈夫か!?」
少年に対し、カイは心配そうな視線を向ける。ロルフとの戦いで負った負傷を心配しているのだ。
「はい、痛みはもうありません」
この言葉は嘘だ。未だロルフの槍で横殴りに叩かれた脇腹が痛む。だが、そんな事を言っている場合ではないとツバキはあえて明るい表情を作った。その表情に、カイは安心したようにホッと息を吐く。
「カイさんの方こそ、大丈夫ですか…?」
「ああ、オレも問題ない。――ツバキ」
カイはツバキに対して睨みつけるような鋭い視線を向ける。もっとも、これは彼女の目つきが元々鋭すぎるために睨んでいるように見えるだけで…別段、敵意がある訳ではない。むしろ、カイとしては久しぶりに会えた椿に対して愛慕の念が溢れ出んばかりであった。
――ツバキ、会いたかった!
そう叫び少年の体を抱きしめ、髪の香りをクンカクンカと嗅ぎ、スリスリと頬ずりをしたい気持ちで心中は占められていた。
しかし、この場は戦場。その気持ちをぐっと抑え、「会いたかった」という言葉を飲み込んだ。
「――ツバキ、戦況を教えてくれ。見た所押されているようだが…オレたちの力で、この戦いをひっくり返そう」
「はい!」
少年と男装の聖騎士は視線を交わす。かつてトーナメントで共に戦い、敵を撃ち破った戦友として。




