決戦49
ロルフは投槍を放つと同時に、副武装である短剣を腰から引き抜いた。この剣で止めを刺すためだ。
胸へ向かって放たれた投槍に対し、カイが取るであろう行動は大きく分けて二つ。
一つ目は投槍を避けるというもの。だが、体の中心目掛け放たれた投槍を避けようとすれば大きく体勢を崩す事になるだろう。
二つ目は剣で投槍を弾くという行動。この場合もまた、投槍の威力に押され体勢が崩れる可能性が高い。
どちらにせよ、投槍に対応した直後に隙が出来る。その隙を突いて決着をつける。それがロルフの狙いだ。
さらに言えばもうひとつ…カイが投槍に何の対処も出来ず、その体を槍に貫かれるという可能性もある。無論、それはそれでロルフにとって何の問題もない。
だが、カイの取った選択肢はそのいずれでもなかった。彼女は、自らの胸へ向かって放たれた投槍を…その手で受け止めていた。
ロルフが投槍を放った瞬間、カイは自らの手に持つ剣を捨てた。そして槍が胸を貫くと思われたその刹那、左右の手で槍を掴み取ったのだ。真剣白刃取りならぬ、真槍取り。真正面から槍を受け止めた事により、カイの体勢が崩れる事はなかった。そしてその視線は――ロルフを睨み続けている。
(竜の鱗すら貫く俺の投槍を掴んだ、だと…!?)
ロルフは己の狙いが外れた事を知った。しかし、もう遅い。目の前の聖騎士は受け止めた槍を構え直し振り上げると――ロルフ・リューガーの頭目掛け、振り下ろした。




