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決戦31
ロルフは乱戦の中少年に近付いていく。双方の距離は約20m。ロルフは100m以上離れた距離でも投槍を命中させる事ができる。この距離でれば、まず間違いなく当たるだろう。彼は右手に構えた投槍を大きく振りかぶる。
(ガキを殺すってのはいい気分じゃねえが…これも閣下のため、勝利のためだ)
上体を大きく曲げながら、それでも視線は標的である椿から離さない。少年の小さな体を目標にして、ロルフは投槍をその手から放った。
少年は指揮に集中しておりこちらには気がついていない。この距離であればまず外す事はない。投槍は目標を間違いなく貫く――と、ロルフはそう確信していた。しかし、
「うっ…!」
投槍が自身の体を貫くその直前、椿は馬に抱きつくように体を沈めた。投槍は椿の上体があった位置を飛びすぎていく。
「なっ…」
ロルフは驚愕に目を見開いた。
(たまたま…?いや、違う…!このガキ…俺の投槍を避けやがったのか!)




