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決戦29
大公国軍の存在に、アイヒホルン支隊もリヒター歩兵部隊も皆注意を奪われた。その一瞬、
「ブルーノさん、敵の左側が手薄です!左手の敵を攻撃してください!」
大公国軍に注意を奪われず、アイヒホルン支隊に生じた僅かな隙を見逃さない人物がいた。椿だ。兵達の後ろから姿を現した少年はあらん限りの声で叫ぶ。その声に応じ、ブルーノが前へ出た。
「おうよ!我に続けい!」
アイヒホルン支隊に空いた小さな穴を広げるように、兵たちを前進させる。
「ズメイさん、竜たちをバラけさせましょう!まとまって行動出来ないと攻撃力が落ちてしまいますが、投槍の使い手に少しでも的を絞らせないようにする方が先決です!」
「了解だ!竜兵分隊、散開!」
椿の指示でズメイも竜を展開させる。
大公国軍の出現により生じた一瞬の空白。その空白を使い、椿は戦況を有利にするための指示を下す。だが、それはあくまで付け焼刃。僅かに少し戦況を持ち直したに過ぎない。




