決戦26
アイヒホルン支隊に援軍が到着する少し前。
帝国・北統王国連合軍本隊。その中心部たる本陣には、総大将たるアイヒホルンの姿があった。彼の元には休む間もなく情報が届けられている。
「敵軍本隊により我が軍本隊の第一陣が突破されました!」
「北統王国軍のダウンズ五千人隊長、敵軍総大将たるオスカー・グロスモントにより討ち取られました!」
「敵軍の損傷は軽微!」
届けられる情報は、アイヒホルン軍本隊の劣勢を示すものばかり。だが、アイヒホルンの顔に焦りは見えない。ここまでは彼の計算通りだ。だが、
「クリスタ・ファーナ三番隊隊長及びディルク・カルヴェント五番隊隊長率いる支隊、苦戦している模様です!」
その報告が耳に入ると、アイヒホルンはすぐさま声を上げた。
「ロルフ・リューガー槍騎士長!」
精鋭槍騎士二番隊隊長、ロルフ・リューガーの名を呼ぶ。
「はっ!」
傍らに控えていたロルフが敬礼と共に一歩前へ進み出る。
「五千の兵を与える!支隊の援護に向かえ」
「援護、すか…?」
ロルフはアイヒホルンからの意外な命令に戸惑ったような表情を見せる。
「あの…お言葉ですけど」
と前置きしてから、
「苦戦してるって言っても、クリスタとディルクがいるなら最終的にこっちの勝ちは揺るがないと思います、アイヒホルン閣下。わざわざ俺が行かなくても…」
「いや、君に行ってもらう必要がある。その理由をくどくど説明している暇はない。全速力で駆け、今すぐ援護に向かいたまえ!」
アイヒホルンは有無を言わせぬ口調で言った。
「わ、分かりました閣下!」
そう答え、ロルフは支隊の救援に駆けていく。




