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決戦22
ボゥの武力は、椿の解析によれば89。対して、ディルクの武力は90を超えている。戦闘力はディルクが上回る。さらに、奇襲に近い形の攻撃。この一撃はボゥの命を刈り取るには十分だ。――もし、邪魔をする者がいなければ。
ディルクがギュサームを振り下ろそうとしたその刹那、重装歩兵部隊の間から人影が飛び出した。その人物は馬上のディルクに向かって、疾風の如き勢いで剣を突き出す。
「なに…!?」
慌ててギュサームを振り下ろす手を止め、防御姿勢を取るディルク。だが、それを見て取った人影はディルクの足に狙いを定めた。装甲に覆われた大腿部。板金と板金の僅かな隙間を突き、剣を突き立てる。
「ぐっ…!」
ディルクの顔が苦痛に歪む。しかし、そこはさすが槍騎士長。痛みに怯むことなく、手に持ったギュサームを人影に向かって振り下ろした。しかし、人影はそれをひらりとかわす。
「奇襲でも足に傷を負わせるのが精一杯か…」
ディルクを奇襲した人影…ヘルムート・リヒターは、目の前の槍騎士長に視線を向けながら呟いた。




