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決戦6

 ボゥ率いる重装歩兵部隊を正面から攻める北統王国軍は、勇猛だった。実力で勝る相手に一歩も引こうとはしない。それには理由がある。彼らは、事前にアイヒホルンから言い含められていた。


「私は優秀な者を愛す。この戦いで活躍した者は、貴族として帝国軍に迎え入れる」と。


 平民から貴族への取り立て。そんなものは、庶民にとっては夢のまた夢だ。だが、この戦いで活躍すればその夢が手に入る。そう思えばこそ、北統王国兵も戦いに命をかけている。


 しかし、アイヒホルンは北統王国兵を貴族に取り立てるつもりなどさらさらなかった。アイヒホルンにとって、貴族とはその高貴なる血統の証明。平民を貴族に取り立てるなど、彼の主義には反している。要するに、貴族に取り立てるなどというのは北統王国兵を戦いに駆り立てるための欺瞞だ。


 そして、その嘘が露見する事もない。北統王国兵は、この戦いで捨て駒となり全滅する予定だからだ。もっとも、生き残りがいたとしても――別に約束を守る義理などはない。


「思ったより頑張ってるみたいね」


 精鋭槍騎士スペツィエル・シュピアリター四番隊隊長、亜麻色の髪を持つ女騎士、クリスタ・ファーナは呟くように言った。


「…ああ」


 同じく五番隊隊長、陰気な佇まいを持つ男…ディルク・カルヴェントは静かに答える。


 この二人はアイヒホルン支隊の指揮官だ。その役割は、リヒター歩兵部隊の殲滅。そのための一手として、北統王国軍の兵を正面から突っ込ませた。もちろん、北統王国兵が正面突破できない事は予想している。あくまで陽動だ。正面の敵を北統王国兵に引き付けさせ、左右から騎馬隊で攻める。それが二人の立てた戦術だった。


「それじゃあ、手筈通りに」


 クリスタのその言葉にディルクは無言で頷く。


 槍騎士長の率いる騎馬部隊が、それぞれアイヒホルン支隊の右翼と左翼から飛び出した。

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