決戦間近22
「確かに竜も暗殺者も駒に過ぎない。だが、例え駒であろうと的確な場所で使用すれば大きな戦果を上げる。竜を効果的に使用すれば一時的に数万の兵を引き付ける事も可能だろう。暗殺者をここぞという場所で使用すれば、将を討つ事も不可能ではない」
「…」
ロルフは押し黙る。
「無論、それらが最大の効力を発揮するのは限定された状況下に限られる。私はの意図を見極め、その状況を未然に防ぐ。――バルクホルン」
「はっ!」
「準備は出来ているな?」
「はい、偵察用軽騎兵五千、いつでも出撃可能です」
「五千…?」
ロルフが眉をひそめた。いや、ロルフだけではない彼の横にいたユルゲンも同様だ。
基本、戦場において偵察用の軽騎兵というのは戦力にならない。最低限の装備は備えているが、機動力重視のため鎧も薄い。矢で射抜かれればすぐに負傷してしまうし歩兵に囲まれればそれを突破する事もできない。
五千もの偵察用軽騎兵を編成するという事は、実質的には五千名の兵力が減少するという事だ。通常、これ程多くの偵察を編成するというのはあり得ない。
「偵察用軽騎兵を出撃させよ。常に敵にまとわりつき、小さな情報でも本営に送れと指示するのを忘れるな」
「了解いたしました!」
バルクホルンが答え、天幕の外に出る。それを見送った後、アイヒホルンはロルフに視線を戻した。
「分かってもらえたかな、ロルフ・リューガー将軍。私は敵の動きを把握するために全力を尽くす。それが勝利を引き寄せると信じているからだ。それ故に――今は、しばし待て」




