決戦間近14
「僕がリヒターさんの補佐、ですか…?」
当然エレオノールと共に騎馬部隊に加わるものだと思っていた椿には、少し意外な話だった。
「ああ。今回の要は騎兵部隊と言っても、やる事は決まっている。敵総大将を目指し、討ち取る…それだけだ。無論、その『それだけ』が大変なのだけれど…しかし、少なくとも何をするかは今の時点で明確だ。だが、歩兵部隊は違う」
エレオノールはツバキをリヒターを交互に見る。
「歩兵部隊は、状況に応じて臨機応変に動いてもらいたい。その際、君の力が約に立つと思うんだ。もっとも、騎馬部隊に随行するか歩兵部隊の補佐を行うかは君の判断に任せたいと思っている」
最終的な判断を椿に任せるというのは、それもまた信頼の証という事だろう。
椿はしばし考える。
――騎馬部隊と歩兵部隊、どちらに随行した方が自分の力が発揮できるだろうか。
結論は…、
「分かりました。僕は歩兵部隊に随行させてもらいます」
「そうか。ありがとう」
エレオノールは微笑んだ。続いてリヒターが、
「おお、こりゃ助かるな…」
と明るい声を出した。
「ツバキがいてくれるなら俺は寝てても問題ねえな」
「ちょ、ちょっとリヒターさん!」
「はは、冗談だ」
リヒターは笑った。そして、隣に座る椿に向けて拳を差し出す。
「2万の兵を指揮するなんざ、めんどくせえ事だが…軍師殿がいてくれるなら心強い。いっちょやってやるか」
「…はい!」
椿も拳を差し出し、リヒターの拳にコツン、と触れさせた。




