アイヒホルン9
アイヒホルンは言葉を続ける。
「いずれグロスモント軍は北統王国の首都を目指し進軍を再開するだろう。それを食い止めるのが我々の役割だ。しかし…我らが気に掛けるべきはグロスモント軍のみではない」
「と、言いますと?」
バルクホルンが問いかける。
「東方で動きがあった。大公国軍の残党を追って、聖騎士が北統王国と大公国の国境線たる海峡…ディアナ海峡にまで迫ってきているらしい」
アイヒホルンはそう答えた。
大公国。聖王国の東、北統王国南東にある…いや、かつてあった国だ。その国の首都は正義の聖騎士によって陥落し、大公国の王たる『大公主』も捕虜となった。
しかし、大公国とて歴史ある国。首都こそ落とされたが、まだ地方には戦う力を残した軍がある。
そういった者たちが大公主の息子を擁立し、聖王国に対して抵抗を続けているのだった。そして、その戦いがここ北統王国にまで飛び火しようとしていた。
「おそらく、大公国残党軍は聖騎士から逃げるために海峡を越えてくる。聖騎士はそれを追うだろう。そうなれば、北統王国、聖王国、大公国残党…そして私たち帝国。4国が干渉する戦いが繰り広げられる事となるだろう」




