アイヒホルン2
北統王国、王都。その王宮内に設けられた議事堂。そこには王国権力のトップ達が集結していた。
宰相、内務大臣、外務大臣、財務大臣、国王秘書官、その他。いずれも高い爵位を持つ貴族である。
彼らの議論は紛糾していた。
「聖王国軍の進撃をどう食い止める!?」
「なんとか、何とか冬まで持ちこたえる事ができれば…さすれば、雪で進軍も不可能になるはず」
「そのような事は分かっておる!そのためにどうすれば良いかという話をしておるのだ!」
「だが、我が国の敵は聖王国軍だけではない。沿岸部のみならず領土内までを荒らしまわる海賊共に、反乱を起こす地方貴族たち…」
「そうだ!海賊といっても馬鹿にはできんぞ!奴らの力は一国の軍事力に匹敵する…」
「待て待て!それよりも今は聖王国軍だ!奴らを止める方法を考えねば…」
議論は堂々巡りである。結局、誰も的確な対処法を見つけ出す事ができない。
しばらく議論が続き…一同が疲れを覚えた所で、ひとりの男が手を挙げた。今まで一言も喋らず議論を見守っていた男…ハインツ・フォン・アイヒホルンだ。
「私からも発言してよろしいでしょうか」
「お、おお、アイヒホルン侯爵殿。何かご意見がおありで?」
外務大臣がわざとらしい笑みを作った。アイヒホルンは、半月ほど前に帝国から北統王国に派遣された軍事顧問だ。あくまで顧問…すなわちアドバイザーでしかないのだが、北統王国としては帝国の機嫌を損ねたくはない。
「海賊の対処方法についてなのですが、私に良い案があります」
「と、言われますと…?」
「貴族は名誉のために動きます。ですが、下賤な海賊共は名誉の尊さを知りません。では、彼らは何で動くのか」
アイヒホルンはやや芝居がかった口調で語りつつ、一同を見回す。
「下賤なる者どもは、金で動きます。海賊共には金を恵んでやりこちらの味方につければ良いのです」




