帝国軍ハイ・ジェネラル
帝国軍が世界最強の軍団となり得た最大の理由。それは、徹底した実力主義の採用だ。門閥とコネが幅を利かす他国と違い、帝国軍は領土拡張のためならばその身分に関わらず優秀な人材を然るべき地位につけた。そのトップが二人の大将軍である。
そして、彼らに次ぐ地位…上将軍の地位にいる者が五人。彼らは当然、他国の上将軍とは一線を画す。名将中の名将たちだ。
帝都防衛総司令官、エルンスト・リヒトホーフェン
近衛総長、グナイゼウ・ラケウ
大将軍付参謀長、フェルマー・シャルンホスト
大将軍付副司令官、エルヴィン・グリュックス
精鋭槍騎兵総司令官、ハインツ・フォン・アイヒホルン
いずれも一流の軍人であるが、この中で最も大将軍に近いと言われるのが精鋭槍騎兵総司令官のハインツ・フォン・アイヒホルンである。
帝都防衛総司令官のエルンスト、近衛総長のグナイゼウは基本的に帝都周辺から動く事はない。大将軍付参謀長のシャルンホスト、大将軍付副司令官のグリュックスは基本的に二人の大将軍と行動を共にしている。
実質的に、上将軍の中で精鋭槍騎兵総司令官のアイヒホルンのみが単独で軍を動かしうるのだ。
そして、彼は今、北統王国の王都アトゥーンに滞在していた。それも、国王の住まう王宮の一室に部屋を与えられて。もっとも、それはおかしな話ではない。帝国と北統王国は同盟関係にあるし、アイヒホルンは侯爵の地位を持つ帝国貴族でもある。国賓待遇として王宮に逗留していても、場違いではない。
「アイヒホルン閣下」
部屋の外から声がかけられた。凛とした女性の声だ。
「うん」
と、アイヒホルンは短く答える。
「ハットランド会戦に観戦武官として同行していた二名が帰還しました」
「ああ、そうかい。それじゃあ部屋まで通してくれないか。直に話を聞きたい」




