ハットランド会戦14
話を振られ、椿は少し驚いたような表情になる。
「僕、ですか…?」
「ああ。今回の作戦を立案をしてくれたのは君だろう?」
オスカーの言葉は間違ってはいなかった。今回の作戦…すなわち、左翼にガレス、右翼にズメイ率いる竜兵とホフマン、さらに敵の背後にリヒターを回り込ませ包囲、敵の戦力を分散させた所で正面から叩くという案を考えたのは、椿だった。
しかし、椿自身に言わせると少し違う。
「僕は作戦を立案したというより、エレナやリヒターさんに相談しただけですから」
椿にしてみれば、自分の思い付きをエレオノールやリヒターといった面々に相談したらそれがたまたま採用された、という認識だ。
「謙遜するとは貴公らしいな、椿くん!しかしたまには自分の功績を誇ってもいいと俺は思うがな」
そう言って、オスカーは笑顔を作った。
「さらに付け加えさせていただきますと…」
と、エレオノールが再び口を開いた。
「敵の奇襲から身を挺して私を庇ってくれたのもツバキです」
そこで一度言葉を区切り、ツバキに視線を向ける。
「…本当に、君には助けられてばかりだ」
囁くような声でそう言ったエレオノールの表情は、穏やかだった。心から椿に対して感謝しているという事が伺える。
だが、これも椿にしてみれば少し違う。椿としてみれば、助けられているのは自分の方だった。彼としては、何とか機会を見つけてその恩を少しずつ返しているに過ぎない。
椿は、照れたような…困ったような、それでいて決して不快ではないような…そんな曖昧な表情でエレオノールを見返した。
「あのー」
そこで、おずおずといった様子で手を挙げた者がいる。エマだ。
「うむ、エマ・リッツ副長!」
オスカーが発言を促す。
「は、はい。それじゃあ、失礼しまっす」
そう言いながらエマが立ち上がった。
「えーと…その、今話に出た、エレオノール隊長を襲ったヤツって何者なんっすかね?自分も槍が飛んで来る所を見たんっすけど…とんでもない威力だったです。ただ者じゃあないと思うんっすけど…」




