新司令官40
「お呼びでしょうかグロスモント卿」
隊長に呼ばれ、ガレスは前へ進み出る。そちらを向いたオスカーはガレスの横に立つ少年と少女、老年の騎士の姿に気が付いた。
「ん…?この方たちは?」
「巨大要塞軍、エレオノール三千人隊からの伝令です」
「エレオノール?もしやエレオノール・アンスバッハ殿か?」
オスカーはエレオノールの何聞き覚えがあるらしく、ほう…と小さく驚きの声を漏らした」
「はい、その通りです。そしてこちらがエレオノール隊に所属するホフマン殿、ツバキ殿、ハティ殿です」
ホフマンと椿は、名前を紹介されると同時に敬礼を行う。ハティはそんな事お構いなしとばかりに突っ立っていたが、椿に促されると彼女も敬礼を行った。
「お初にお目にかかる、俺はグロスモント三万人隊隊長、オスカー・グロスモントだ」
オスカーは騎馬に跨ったまま、勇ましい敬礼を椿たちに返した。そして何かを思い出したように、「ん…?」と首を傾げる。
「ツバキ…くんか。どこかで聞いた名だな…?さて、どこで聞いたのだったか…?」
そう呟いて考え込むオスカー。
(僕の名前を聞いた事がある…?)
正直、椿にはオスカーがどこで自分の名前を耳にしたのか見当もつかなかった。
「いや、今はそれどころではなかったな。まずはエレオノール隊からの報告を聞こう」
「はい、分かりました――」
そう言って、椿はエレオノール隊の状況を語った。具体的に言うと、パウル隊の隊長を捕らえた事。エレオノール率いる騎馬隊がジラドルフ隊の左翼に攻撃を仕掛けた事などだ。
「――ジラドルフ隊が降伏した事は、エレナ…いえ、エレオノール隊長にも伝わっているはずですから、もう少しでここに到着するはずです」
とも言い添えた。
「なるほど…三千の兵で一万を率いる将を生け捕りにするとは…見事!」
オスカーは感嘆の声を漏らす。
「エステル・ラグランジュの送り込んだ部隊だ、ただ者ではないとは思っていたが…ここまでの戦果を上げるとは。いや、貴公達の活躍のおかげで我が隊は全力で戦う事が出来た。心より感謝する!」
そう言って、オスカーは馬から降りてホフマン、続いて椿の手を握った。ハティは、
「ボクはいい」
そう言って、さっと椿の後ろに隠れる。見方によっては無礼とも取れる態度だったが、オスカーは特に気に留めなかった様子だ。




