新司令官29
グロスモント隊とジラドルフ隊の戦いはグロスモント隊がやや優勢なまま膠着を見せていた。ジラドルフ隊の防御を突破するのは容易ではないと判断したのか、グロスモント隊の攻勢は弱まっている。
「防御を固めるという戦法が上手くいきましたね、将軍」
「うむ」
ジラドルフの周囲を固める側近指揮官のひとりの言葉にジラドルフは頷いた。
「パウル隊の方に邪魔が入ったのは少しばかり計算外でしたが…数はパウル隊の方が上。そろそろ蹴散らして駆けつけて来る頃でしょう。いやあ、リヴァーシュ隊が潰走させられた時は焦りましたが、結局我が軍の勝利は揺るぎませんでしたな。はっはっは」
笑みを浮かべる側近だったが、ジラドルフは彼をジロリと睨みつけた。
「馬鹿もん!浮かれるには早い!」
その言葉に側近は思わず背筋を伸ばす。
「何が起こるか分からんのが戦場というもの。勝ちが確定するまで気を緩めるな!」
「し、失礼しました…」
側近は頭を下げる。ちょうどそこに、東方を監視していた兵が駆けつけた。
「ジラドルフ将軍!東方に動きがありました!」
東方とは、すなわちエレオノール隊とパウル隊の戦闘が行われている方面だ。
「お、おお…ついにパウル隊が敵を倒したんだな!」
側近は、ジラドルフの怒りから逃れようと兵へ近付いた。
「それで、パウル隊はあとどのくらいで到着しそうなんだ?」
「い、いえ、それが…東方から駆けつけてくるのはパウル隊ではありません!パウル隊と交戦していた敵部隊です」
「なっ…」
「そのう…状況から察するに、パウル隊は敗れたのではないかと…」
「ば、馬鹿な…敵部隊は三千程度という報告だったではないか。パウル殿の部隊は一万だぞ!」
「…予想外の事が起こるのが戦場というものだ」
そう言ったのは、二人の話を聞いていたジラドルフだ。
「パウル隊が敗れたというのは間違いないか」
「す、少なくともパウル隊の統制が乱れている様子は確認できました。敗れたか、そうでないにしても…我が隊へ援軍に来るのは難しい状況ではないかと思われます」
そう答えたその時、別の兵の声が割り込んできた。ジラドルフ隊とグロスモント隊がぶつかる前線から駆けつけてきた兵だ。
「わ、我が隊と交戦中の敵軍が攻勢に移りました!物凄い勢いです!」




