新司令官24
パウルは一時的に持ち場を離れ、エレオノールから逃げる事を選択した。これは何もパウルが臆病だからという訳ではない。戦略上それが適切だからと判断したからだ。
逃げる先は、自軍の右翼だ。左翼からはエレオノール騎馬隊が、正面からは竜が侵攻してきている。かといって後方に逃げれば、隊から孤立してしまうため必然的にそうなったのだ。
(意外と手こずるはめになったな…)
パウルは、右翼に馬を駆けさせながら今後の展開に考えを巡らせる。
(しかし、竜も女騎士もそろそろ勢いが落ちる頃だろう。思ったより時間を浪費してしまったが…ジラドルフ隊の救援には十分間に合うはずだ)
ちらりと後ろを振り向く。敵騎馬隊の姿は見えない。予想通り、追いつく事はできないようだ。
そして再び前に視線を向けたその時…隊列の兵を掻き分け、前方から伝令兵が駆けてきた。
「敵襲!敵襲!右翼から敵騎馬隊が突入!」
パウルは駆け過ぎようとする伝令兵の腕を掴み問いかける。
「待て!数はどれほどだ!?」
「な、なんですか?私はパウル将軍に伝令を届けないと!」
「俺がそのパウルだ!!」
「あっ!しょ、将軍!失礼しました!…何故こんな右翼に!?」
「そんな事はどうでもいい!敵の数を言え!」
「は、はい…!敵の騎馬隊は三百です!」
「そうか…」
なるほど、元々右翼に回り込んでいた敵騎馬隊が突入したという事らしい。
(だが、たかだか三百騎で何ができる)
しかも、率いているのは噂の女騎士ではないはず。となれば容易に迎え撃てるはずだ。
「周辺の兵を率いる部隊長はいるか!?俺が直接指揮を取る!敵を迎撃するぞ!」




