新司令官9
「リ、リヴァーシュ隊長!」
「そんな、将軍が…!」
隊長が討ち取られた事により、リヴァーシュ隊の兵達は大きく動揺する。その場でへたり込んでしまった者すらいる有様だ。
「さあ、まだ戦いたい奴はいるか!?もし俺に挑むと言うのであれば相手になろう!」
オスカーはそう言って周囲を見回す。数の上では未だにリヴァーシュ隊の方が多い状況だ。しかし敵将の圧倒的な実力を見せられてしまった以上、もはやリヴァーシュ隊からは戦意が喪失してしまっていた。
「剣を捨てるのであれば命は取らん!だが、あくまで戦うというのであれば容赦はしない――」
オスカーが右手を挙げる。すると、グロスモント隊の騎兵達が一斉に剣を構える。一糸乱れぬその動きは、兵の練度の高さを物語っていた。到底、隊長を失ったリヴァーシュ隊の叶う相手ではない。
「わ、わ、分かった!リ、リヴァーシュ隊副長の権限をもって、降伏を申し入れる…!」
そう言って副長が進み出る。オスカーはそれに頷いた。
「了承した。では、速やかに武器を捨て甲冑もこの場で脱ぎ捨てるように。そして、すぐにこの戦闘領域から離脱してくれ」
この指示は、敵を捕虜に取る余裕がないために下したものだ。何しろ、グロスモント隊はこれからまだ戦闘を行わなければならない。
「承った。――総員、速やかに武装解除だ!」
副長が命令を下すと、兵は素直に武器を捨て甲冑を脱ぎはじめた。不服を申し立てる者はいなかった。本来ならば、ひとり残さず殲滅されても文句を言えない状況だったからだ。また、隊長のリヴァーシュが生存しているという状況も大きかった。リヴァーシュが討ち死にしていれば、その恨みで徹底抗戦を貫く兵も現れただろう。
「それで、グロスモント殿。隊長の…リヴァーシュ将軍は…」
副官自身も武具を外し、オスカーに問いかける。
「悪いが、この者のみは捕虜として連れて行かせてもらう」
そう言って、オスカーは肩に担いでいたリヴァーシュを自軍の兵に渡した。
「当然、捕虜とはいえ礼節をもって対応しよう。聖騎士の名に誓ってな」
「…ご厚意、感謝いたします」
それからものの数分でリヴァーシュ隊の武装解除は完了した。リヴァーシュ将軍は数名の兵に運ばれて巨大要塞へと向かっていき、リヴァーシュ隊は戦域から離脱。そして――オスカーは、次なる敵にその視線を向けた。




