表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/1118

西方10

「閣下、伝令です」


 新たな伝令兵が天幕テントに入室する。総大将故に当たり前といえば当たり前なのだが、このように常に情報が入ってくるような環境では頭を休める暇もないだろう…と、フィレルはヒューゴを気に掛ける。しかし、だからと言って情報を遮断シャットアウトする訳にもいかない。


「聞かせてちょうだい」


 フィレルは伝令兵を促した。しかし、


「いえ、その――」


 と、言葉を詰まらせてフィレルの方へ申し訳なさそうな視線を向けた。


「本国のシャルンホスト参謀長ストックスフィアからの伝令なのですが、大将軍フィシュタル・ジェネラル閣下以外にはお伝えしないようにとの事でして…」


「そう…それなら私は退出しましょう」


 そう言って天幕テントから出ようとするフィレルだったが、ヒューゴはそれを留めた。


「いや、かまわない。フィレル将軍であれば耳にしてもか構わないだろう。だが、それ以外の者は退出して貰えるかな」


 ヒューゴの指示により、ヒューゴ、フィレル、伝令兵の三名以外が退出すると兵は伝令の内容を伝えた。


「聖王国北部方面軍の攻撃により…北統王国、巨大要塞フルングニルが陥落しました」


「なに…」


 フィレルは思わず声をあげる。世界最強の要塞、巨大要塞フルングニルが陥落するとはにわかには信じられなかった。


「いずれ全軍に伝わる事とは思いますが、取り急ぎ大将軍フィシュタル・ジェネラル閣下にのみお伝えしようと急ぎ伝令を送らせた…との事です」


「そうか」


 伝令兵の言葉に、ヒューゴは眉ひとつ動かさない。巨大要塞フルングニルが陥落した事はヒューゴにとっても意外なはずだが、彼にとっては動揺するに値しない出来事だという事だろうか。


「さらに、シャルンホスト参謀長独自の諜報網を使用し調査した所…聖王国側の実質的な総司令官はエステル・ラグランジュという人物だという事が判明しました。それに加え――以前閣下が気にしておられたエレオノール・フォン・アンスバッハ、ツバキ・ニイミ…この両名も要塞攻略に加わっていたとの事」


「なるほど…承知した」


 そう返答し、ヒューゴは突如立ち上がる。そしてフィレルや伝令兵に背を向けた。


「閣下…?」


「すまない、フィレル将軍。しばしの間私をひとりにしてくれないか。…僅かな時間でいい」


「か、かしこまりました」


 ヒューゴがこのような事を言うのは珍しい…やや驚きながらも、フィレルは伝令兵と共に退出した。


 ただひとり残された天幕の中、ヒューゴは小さく呟く。


「君なのか…」


 その声には、僅かながら歓喜の響きが含まれている。誰にも見せた事のない…暗い喜びの響きが。


「私の待ち望んでいたものは…やはり、君なのか?ツバキ・ニイミ――」


 ヒューゴの瞳の奥に、燃えるような闘志が宿った。





 第三章 北部攻防戦 終了

 第四章 聖騎士VS帝国の剣へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] …第三章 北部攻防戦 終了…お疲れ様でした。 …黙って見てましたが…帝国はあんな感じか…へ~… [気になる点] …しっかし…ヒューゴの奴…椿が求める人材か?…って…ちと自惚れてない?主人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ