西方5
ヒューゴ率いる帝国軍5万とリーム将軍率いる連合国西方軍2万との闘いが開始してから1時間後――。
「ば、馬鹿な…」
リームの表情からは不敵な笑みが消え去っていた。
彼の眼前には、士気が崩壊し逃げ惑う兵士たちの姿と、打ち倒された兵の屍が広がっていた。そのほぼ全てが自軍の兵たちだ。一方の帝国軍はというと――漆黒の甲冑を光らせ、一糸乱れぬ隊列で逃げ惑う兵たちに追撃を加えている。
世界最強とも言われる『帝国の双剣』、その強さは十分に理解していた。しかし、どのような強力な軍、有能な指揮官相手でも防御に徹せば2時間程度耐えきれる――そのはずだった。
「これ程とは…」
帝国軍の精強さは、リームの予想を…というより、この世界に住む人間の常識を凌駕していた。帝国軍と接触した瞬間に、連合国西方軍はなす術もなく打ち倒され壊乱し…現在、まともに戦闘に参加できる連合国兵は3000名程となっている。敗北は必至――というより、軍としては最早機能しなくなっている状況だ。
「将軍、リーム将軍!」
茫然自失しているリームに、副将のボールキンが声をかける。
「将軍、最早この場の勝敗は決しました。…せめて手勢だけを引き連れ、首都に引きましょう」
そう告げる彼の声は悲痛に満ちていた。例え首都に逃れた所で、どうしようもない事は分かっている。死期が少しばかり伸びるだけだ。それでも、このまま戦い続けるよりはマシというものだった。
「ああ…」
と頷きかけたリームだったが…考えを改め直し、首を振る。
「いや、ここで逃れた所でその後希望がある訳でもない。どうせ死ぬのならば――ヒューゴ、奴を打ち倒す」
そう言って、戦場を睨みつけた。
「戦闘可能な兵、その全てを使い敵の総大将、ヒューゴに向かって突撃を敢行する。…大将軍の…首を取るぞ!」




