西方2
ヒューゴは、かつてガラドの町の市庁舎だった建物を仮本営としていた。その仮本営に、伝令兵が足早に入室してきた。
「失礼いたします!このガラドの町に敵兵が迫っているとの情報です!」
「敵兵?」
ヒューゴの隣に立つ女性…フィレル将軍が伝令兵に視線を向ける。
「いったいどこから?」
「南方からです!その数、2万!」
伝令兵がそう告げた直後、
「閣下!ヒューゴ閣下!」
今度は別の兵が慌てふためきながら入室してきた。
「て、敵襲です!北方から…おそらく2万5千ほど!」
「なに…?」
フィレルの眉間が険しくなる。ヒューゴの率いている兵は約20万。しかし、現在ガラドの町には5万ほどの兵しか駐屯していない。その他の兵は占領した地域の統治や他方面への対処に割かれていた。敵が南方から2万、北方から2万5千…合わせて4万5千。帝国軍と互角に戦う事のできる兵数だ。
「一度我が軍に破れ、敗走した兵たちが再び集まったようですな」
フィレルやヒューゴからやや離れた位置にいた大男…マルセル・ホイサーが進み出る。
「そうね。さっそく兵たちに迎撃の準備を…」
「いや、まだだ。フィレル将軍」
今まで会話に加わらず、沈黙を守っていたヒューゴが口を開いた。




