新戦力19
「だいたい、お前がボク達を助ける理由なんて何もないじゃないか!」
ハティの持つ短刀の刃が椿の首にぴったりと当たる。僅かにでも力を籠めればその刃が喉元に食い込むだろう。
「理由ならあるよ」
椿は視線を逸らさず答えた。
「な、なんだ行ってみろ!」
「その前に、僕から質問させてもらいたい。君はどうして君の弟妹を助けたいと思ってるんだい?」
「そんなの…決まってる!ボクも、ボクの弟も妹も貧民街に捨てられてたんだ。ボクと同じ境遇のみんなを、放っておく訳にはいかない…!」
「だったら僕も同じだよ」
「なに…?」
「僕も、この世界に当然放り出されて…野垂れ死ぬか、殺されるか…そんな状態だった」
幾度となく考えた事がある。『もしもこの世界に放り出された時、エレオノールに助けられなかったら』という想像だ。その場合は、食料を手に入れられず餓死するか、王太子のような人間に殺されるか…もしくは、誰かに都合よく利用される人生を送る事になっていただろう。今のハティのように。
「僕は、あの日の僕のように助けが必要な人間を助けたいと思う。…君が、君の弟妹を助けたいと思うように。それが、僕が君たちを助けたいと思う理由だよ」
「だ、黙れ…ボクはお前の言う事なんて…」
「そうだね、信じて貰えないかもしれない」
短刀の冷たい感触をその首筋に感じる。しかし、引きはしない。自分の命を賭けるしか、少女を説得する事はできないと感じているからだ。
分の悪い賭けだとは思う。もし少女の信頼を得る事が出来なければ、その刃によって命を奪われる事になるだろう。ひょっとしたら馬鹿な事をしていると笑われるかもしれない。
けれど――この世界に放り出された自分を助けてくれたエレオノールのように、誰かを助ける事ができるのであれば――その命を賭けるのは惜しくはなかった。
「くっ…う…」
ハティの手が下がる。そして、その手から短刀が床に滑り落ちた。
「…お前の言葉を信じる。もう、お前たちとは戦わない…だから、ボクの弟妹を助けてくれ」




