新戦力14
(そういう事か…)
ふたりの会話で、椿はおおよその事情を理解した。
ハティが貧民街出身だという事、彼女には養うべき人間がいる事、そのために戦っていたのだという事。
「だったらこんなんはどうですかい?」
扉の奥で、今までとは別の声がした。甲高い男の声だ。
「ん?お前、起きてたのか?」
「アニキとハティの声で目が覚めたんでさあ。いや、話は途中から聞いてました」
どうやら、新たな声の主は今までハティと話していた男の弟分らしい。
「自分の食いぶちは自分で稼がせるって訳で…」
「あ?それができたら苦労はしねえよ。あんなガキ共にロクな仕事なんてできねえだろうがよ」
「いやいや、そうでもないですぜ、アニキ」
そう言って下卑た笑い声をあげる。
「金持ち連中の中には、ああいうガキ共が好みっていう連中もいますからね」
「ああ、なるほどな」
「な、なんだ!お前ら何を言ってる!」
たまりかねたようにハティが口を開く。
「ああ?だからてめえが金を稼げねえなら金持ち連中にあのガキ共を売り飛ばすつってんだよ」
「なっ…!」
「まあ、売り飛ばされた後は玩具にされて、飽きられたら捨てられる運命だろうがなあ」
「お、お前…!」
「あ?なんだその反抗的な目は!?俺に楯突こうってのか?俺に手ェ出したら、てめえも、てめえの弟妹もこの巨大要塞じゃまともな暮らしは出来ねえぞ。分かってんのか!?」
「くっ…」
「そうなりゃ、てめえはともかく病気の妹はお陀仏だろうなあ。ははっ…馬鹿な姉貴のせいで死ぬ事になるとは可哀そうなこったぜ。――おい、なんとか言ったらどうなんだ、ハティ!」




