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統治2

 巨大要塞フルングニルの明け渡しは、椿からしてみれば意外なほどスムーズに行われた。その理由としては、エステルの手際の良さに加えこの世界の住人にとって『所属する国が変わる』という事に対する忌避感が少ない事が挙げられるだろう。


 聖王国と北統王国は言語もほぼ同じである上に、遡れば両家の王室同士も血が繋がっているという。つまり、自分たちを治める国が変わった所で大きな嫌悪感はない。それ故に、民衆が恐れるのは『自分たちの権利が守られるのか』という一点に尽きる。土地や財産を奪われ、下手をすれば奴隷に落とされる可能性すらある――実際に、帝国などは侵略した地域の住人の多くを奴隷として扱っている――だからこそ、兵たちは戦うのだ。


 しかし、権利を奪わないのであれば民衆は新たな統治者に素直に従うだろう。それどころか、善政を布くのであれば新たな統治者を歓迎する。


 そして、エステルの発表した政策は巨大要塞フルングニルの人間にとって喜ばしいものであるようだった。


 もっとも、細かな政策はこれから決めていかなければならない。さらに、いずれは巨大要塞フルングニルを取り返そうと北統王国軍が攻めてくるだろう。その対処も必要だ。そのためには巨大要塞フルングニルおよびその周辺に対するより詳しい現状把握が必要だった。さらにドラゴンによって破壊された城壁の補修も速やかに行う必要がある。エステルはそれらを部下に命じた。


 椿もまた、自らの得意分野――すなわち、『人材の発掘』によってエステルに貢献しようと行動を起こしかけたのだが、その矢先に伝令が届いた。


「失礼します。北部要塞ノルド軍司令官…ヒーマン閣下がこちらへ向かっておいでです」


「了解したわ」


 エステルは答える。


「それでは、貴賓室でお迎えしましょうか。――エレオノールちゃん、ツバキくん、お手数だけれど同席してもらえるかしら。ほら、やっぱり美女と美少年がいた方が場も和むでしょう?」

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