形勢逆転2
エレオノールの快進撃は続いていた。敵を蹴散らし、中央軍の奥深くまで進んでいく。
(このままの勢いなら、新しく来た敵指揮官も撃破できるかもしれない)
どうやら、新しく派遣された最高指揮官はかなり後方に陣を構えているようだ。当初の最高指揮官――レプキナ将軍が討たれたために用心しているのだろう。だが、今の勢いであれば後方にいる最高指揮官にまで到達することができるかもしれない。
そう思ったその時――椿は、視界の端に素早く動く存在を捉えた。
(あれは――!)
まさか!そう思いながらも、彼の本能はその存在を…その危険性を認めていた。
「エレナ!危ない!左後ろだ!暗殺者が――!」
その声と、暗殺者――ハティがエレオノールに飛びかかるのはほぼ同時だった。
エレオノールは素早く振り向き、暗殺者の攻撃を受け止めた。一瞬、ハティとエレオノールの視線が交錯する。
「…」
ハティは続けて二撃目、を繰り出した。今の彼女は、二刀流…右手に短剣、左手に刺突短剣を握っていた。二撃目…刺突短剣による攻撃は、エレオノールの装着する兜を掠めるにとどまった。
フードで目元を隠したハティは、僅かに笑みを浮かべる。しかしそれ以上攻撃を加える事はせず、身を翻すと敵兵の中へと姿を消した。おそらく一呼吸にも満たない一瞬の攻防だった。
「エ、エレナ!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。しかし、もう追いついて来るとは。君が見つけてくれなかったら、どうなっていた事か…」
そう言ったエレオノールだったが、兜に違和感を覚えハティに攻撃を受けた左側を探る。そこは、ちょうど兜と面頬を繋ぐ鋲部分であり…そこが破壊されていた。
「まさか…最も弱い鋲部分部分を狙ったのか…?」




